がっかりして、うつむきながら歩いていると・・・。見えました、富士山!
なんと、マンホールのフタに富士山が描かれていたのです。思わず、カメラのシャッターを切ってしまいました。
さすが富士市、マンホールにも富士山の絵、と感動したのですが、そこに書かれた「おすい」の文字を見て、過去の公害を思い出しました。
富士市一帯の海岸は田子の浦と呼ばれ、古くから富士山を眺める絶景の地として有名でした。万葉集にも「田子の浦ゆ うち出でてみれば 真白にそ 富士の高嶺に 雪は降りける」という歌がおさめられています。
しかし、50年ほど前、製紙工場の排水などが原因で、ヘドロ公害が発生しました。ヘドロ公害は、工場排水などに含まれる浮遊物質や有害物質が港湾などに堆積することに伴って生じるものですが、その結果、田子の浦港の機能は低下し、ひどい悪臭が発生し、大きな社会問題となりました。
その後、しゅんせつ事業などが行なわれ、環境は改善されましたが、水環境の復元と保全は、現在も富士市の大きな目標であり、「良好な水循環をめざすまち計画」が進められています。
ちなみに、田子の浦港などから除去されたヘドロは、乾燥後、富士川河川敷に埋め立てられ、緑地公園に生まれ変わっています。
富士山からの奇麗な水が豊富にあった富士市、それを求めて多くの製紙工場が集中したがゆえのヘドロ公害、そのヘドロを埋め立てて造った緑地公園、川や海の環境を守るための下水道事業・・・。そんな人間の営みを、ずっと見続けている富士山。
そんな想いを巡らせたマンホールでした。