2010-10-07

ノーベル化学賞と環境


 鈴木章先生、根岸英一先生、ノーベル化学賞受賞、おめでとうございます。
 さて、その授賞理由は「有機合成におけるパラジウム触媒によるクロスカップリング反応の開発」。なんだか難しそうですが、実は、私たちの身近なものにたくさん使われている技術です。
 例えば、最近どんどん薄くなっているテレビや携帯電話。そのディスプレーには有機ELという素材が使われているものが増えています。この有機ELを造るときに、クロスカップリングが用いられています。
 昔のブラウン管式のテレビに比べ、有機ELを用いたテレビは消費する電力が少なく、環境に優しいテレビといえます。
 また、お薬でいえば、血圧降下剤や抗がん剤、さらには、殺菌剤、農薬などでも、製造時にクロスカップリングが用いられているものが少なくありません。
 なお、クロスカップリングの技術は、現在でもどんどん進化しており、有害な重金属を使用しない、環境に配慮した方法が研究されています。ちなみに、パラジウム触媒によるクロスカップリングの先駆的な研究をされたのは、故・溝呂木勉先生で、この分野の日本の技術は世界のトップレベルです。
 なお、写真は本校に薬品庫あった硝酸パラジウムですが、パラジウムの含有量などを分析するときに用いる試薬で、クロスカップリング反応とは直接関係はありません。